1990年8月 超高級魚を追い求めて

雑誌の取材で「ココスを飼うのが夢です」と語ったのがきっかけで、数年ぶりに入荷したココスの情報が届いた。当時の価格で、35万円(!)。サラリーマンの僕の月収手取り額を大きく上回る価格で、まともな神経をしていては絶対に手が出せないものだ。・・・しかし、買った。ほとんど躊躇らしい躊躇もぜず、買った。ここで買わなければ生涯お目にかかれないかも、と思ったのだ。だが、問題はそれだけで済まなかった。なんと、後生大事に持ち帰ったはずのココスが、3日後に落命したのだ!死因は不明、当時は減圧処理の問題ではないか、と思っていたが、いずれにせよ僕は一瞬で2か月分の手取り給与額を失った。
・・・で、どうしたか。なんと、あちこちのショップに電話を掛け捲り、友人知人を頼り、雑誌の編集部にも問い合わせ、「ほかにどこかココスが入荷した店はないか!?」と探し回ったのだ。日本に入荷したのが一匹であるはずがない、必ず入手してやる、と思ったのだ。そして、当時調布にあった店にいる、とわかった僕は会社を休んで行き、その場で購入!なんと計70万円!年収の5分の1である。当時住宅ローンも抱えていたので、もうあとはパンの耳でも食べていくしかないのだが、僕は大満足だった。
結局これがきっかけになって火が付き、「やたら高級魚を惜しげも無く買う男がいる」ということでちょっと評判になって、ホツマツア(当時25万円)、ゴールデンエンゼル(当時15万円)、ペパーミントエンゼル(当時95万円!)と高級魚に手を出す悪夢のアクアリストとなった。不思議なものでそのころ仕事が変わって、自分の能力が生かせるようになったため年収もかなりアップして、そのお金は全部高級魚に消えて自分は相変わらずパンの耳にマヨネーズを付けて食べていた
オーバーフロー海藻水槽
水槽スペック
●以前のサンゴ水槽(奥行きのないやつ)が海藻水槽になった。濾過のパフォーマンスは120cm水槽に次いで高い。そしてベアタンクである。
●今度はいささか知恵もつき、海藻とソフトコーラルでバランスの取れた水槽を目指した。多少レイアウト水槽らしくなっている。照明は相変わらずだが昼間直射日光が差すので、調子は良かった。

レイアウト上の高さを得るため、今度はサンゴ岩を背後に立てかけて高さを得ようとしている。

今度は失敗できない!といろいろなことを考えながら飼育をしていた。できるだけ人工餌も食べさせよう、とか昼間できるだけ太陽光を入れようとか。それまでは水温上昇が怖くて365日カーテン締め切りだった。
新・海藻水槽のタンクメイト
すべてが王様・ココスのために
●とにかくココスを飼うことだけが、この水槽のすべての目的である。なので、王様のタンクメイトはあくまでも王様を引き立てるために存在し、王様のジャマになるようなものはありえないケンカして攻撃するなど、もってのほかである。
●そのため、90cm水槽にわずか4匹しか入れなかった。写真の3匹のほか、写真が無いがヒメニセモチノウオがいたが、いつも隠れていることが多く写真に収められなかったようだ。

ココス大王・U世の雄姿である。本来丈夫なはずの魚種なので、初代の悲劇は本当に悲劇としか言いようが無かった。二世王は大変お元気で、そのまま僕の独身貴族時代の終わりまでお付き合い頂いた。もともとLサイズであったが、さらにふた周りほど大きく成長した。

単独でも十分主演女優が張れるフレームラス。ベラの仲間では最高の部類に入ると僕は思っているが、この水槽ではそれでも脇役だ。ちょっと大きめだったが王様とのバランスはばっちりで、おとなしくいつも王様によりそって泳いでいた。

王の小姓に抜擢され、サンゴ水槽から引っ越してきたレッドシークリーナーラス。そもそもクリーナーラスはどれも餌付きが難しいが、彼はなぜか簡単にフレークを食べるようになり長命だった。王のお世話をして白点病撃退などに役立っていたようだが、ほかの種に比べればクリーニングはあまりしないほうだ。
この王様水槽は、その後グレードアップするまでこの状態を保ち、長く王国の繁栄をささえていた。このわずかな期間に手痛い打撃を受けたため、飼育技術もかなりアップしてきたような気もするが、結局海藻の力で水槽を維持する、という今日でいうナチュラルシステムの思想を取り入れたことが成功要因だったようだ。

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