白点病と戦う
INDEX
・・・はじめに
・・・白点病の原因生物についてのおさらい
・・・白点病による水槽崩壊のメカニズム
・・・白点病は「個体の疾病」ではなく「環境問題」だ
・・・白点病治療の傾向と対策(都市伝説を含む)
    ├薬剤療法
    ├低比重療法
    ├連続換水療法
    ├ウミトサカは白点病原虫を食う?
    ├食事療法による免疫強化で白点病予防?
    └UV殺菌灯では白点病治療は不可能?
・・・大きな敗北、されど小さな勝利
はじめに
海水魚飼育をする上で、ケアしなければいけない『魚病』は数多あると思うが、結局最悪最凶なのは白点病に尽きる、と僕は思っている。
どんな飼育書にも記述があるし、アクアリストのHPにも必ずと言ってよいほど記述があるので、情報源には事欠かないはずなのだが、それでも誰がやっても同じ結果が得られる決定的な対策がないのか、あるいは情報が氾濫しすぎて初心者が混乱するのか、おそらくいまだに白点病がきっかけて海水魚飼育を断念する人、悲惨な結果を迎える人も多いのではないだろうか。
恥ずかしながら、私も通算32年以上も海水魚飼育をやっていて、自分なりに決定的な方法を見出せずに今日まで来た。つい先だってもそれで大事なオレンジストライプのペアを亡くしたばかりだ。だがこのトラブルを通じて、ようやく自分として過去の体験を通じて得た情報すべてに対して筋が通った説明らしきものがつくようになり、今日現在もシマヤッコの白点病と戦いつつ、それが解決に至ろうとしている状況から、今考えていることをまとめておこう、と思い立った。もしこのつたない文面を読まれた方が、同じ方法で完治できるという保障はない。ないが、おそらく古今言われる多くの解決策を試した結果たどり着いた現実的な解であることは確かなので、いくばくかは参考にしていただくことが可能になるだろう。。。
白点病の原因生物についてのおさらい
 海水性の白点病の原因生物がCryptocaryon irritansであることは最近では良く知られているし、淡水のそれとはまったく似て非なるものだということも良く知られるようになってきた。誤解を招きやすいのは、それらが非常に似た症状を示すからであるが、この白点病と呼ばれる由来となる魚体に生じる白い点が魚体自身の防疫機能によって出された粘液によって白い点に見えるから似ているだけであり、病原となる原虫が魚体の皮膚に侵入するということのみが類似していることによる。つまりどんな寄生虫であれ、同じ振る舞いをすれば全部白い点に見えるのだ。実際には、原虫の分裂好適水温(淡水では25度以下、海水ではそれ以上)も異なれば、ライフサイクルの期間も異なるようだ。そういえば昔、「金魚の白点病は塩を入れて治すのだから、海水にも白点病があるというのは変だ」といった人がいた。。。さ、さむい・・・

白点病原虫は以下のサイクルを繰り返しながら、猛烈な勢いで増殖する。(水温24℃)

魚体に感染=3〜7日間
シスト形成からセロント放出=3〜28日
水中での遊離したセロントの寿命=1〜2日

1つの原虫のシストから200のセロントが出現するということなので、10日ごとに200倍になっていくということになる。水中でのセロントの感染力は放出後4時間経過以降急速に失われ、18時間後には感染力を失うという。とはいえ多数のシストから時間差をもって続々セロントが放出されるので、狭い水槽内での感染機会は決して低くない。またセロントの放出は夜間から朝方にかけて起こる周期があるとのことで、セロント時期に駆除するしか効果的でない方法をとる場合は重要なポイントである。

前回悲惨な末路をたどったオレンジストライプのペアのときは、最悪の感染状態に至った7月14日のちょうど7日前、しまじろう2号が感染した連中から生まれた200倍のセロントが一斉に襲い掛かった感じである。今回のしまじろう3号の感染源も、ダイスケハナコが死んだとき離脱してシスト化していた連中の一部の生き残りであろう。そう考えると、すべてのシストがセロント化して遊離し、薬剤や殺菌灯の力で殲滅されるには、最短でも1週間最長では約1ヶ月ということになる。

白点病による水槽崩壊のメカニズム
なぜ水槽内では、白点病が致命的な崩壊を引き起こすのか?当然ながら自然界にも白点病原虫は存在する。そして白点病原虫は、それ自体が直接的に魚を死なせるだけの毒素や性質があるわけではない。魚に寄生して繁殖することから、むしろ宿主である魚あっての白点病原虫、もし彼らが自然界でも猛威を奮って魚類を滅ぼすようなことになったら、彼ら自身も滅びてしまう。そのような危険生物は進化の過程で消滅していくはずだ。つまり、自然界では白点病原虫は魚類と共存している。だったら、なぜ?
これはつまり、水槽という閉鎖空間がゆえのことだ、と考えられる。離脱した原虫から生まれたセロントが再度同じ固体に寄生するチャンスなど、自然界ではまずありはしない。魚の生息密度も水槽とは比べ物にならないほど低いので、おそらく200倍に分裂したセロントの中の1つ、2つが再び別の魚体に寄生できるチャンスそのものが砂漠でコンタクトレンズを拾うようなものだからであろう。またそもそも魚も、1つや2つのセロントの寄生くらいだけでは「ヘ」でもないし、たぶん飼育者も気づかないだろう。問題は、ハイスピードで増殖した『それ』が一斉に魚に襲い掛かり、自然界ではありえない密度で寄生したあげく、えらに寄生して呼吸困難を起こさせたり、表皮に多数寄生して浸透圧調整力を不能にしたりして宿主を死滅させてしまっているということにある。

それと、白点病感染→水槽崩壊は、あらゆる魚、あらゆる水槽で一様ではない。上に述べたメカニズムを考えると、以下のようなことが言える。
@小さい水槽より大きい水槽のほうが感染スピード、蔓延までの期間が長い。巨大な水槽であれば、自然界と同様なかなか容易なことでは蔓延しないと思われるので、水槽サイズが小さいほど危険、大きいほど安全ということが言えるはず。ちなみにウチのわずか30Lの水槽では、1サイクルあれば完全に蔓延してしまうことがわかった。
A感染までの期間には魚種と魚のコンディションが大きく影響する。粘膜強い系の魚種(ハタタテハゼなどクロユリハゼ亜科の魚やハナスズキ族の魚など)は感染しにくく、体表が薄い魚種(ニザダイ亜目とか)は感染しやすい。ただ、当初感染しやすい魚種に取り付いて増殖し一定密度を超えると、もうおかまいなしに誰にでも感染するようだ。またコンディションの良い魚には強い免疫力があるので、それも大きく影響する。
B完全ではないが、ある程度魚は寄生程度に比例して免疫力を獲得する、という報告がある。昔僕はスズメダイ等が普通に生存している水槽で新参者が瞬く間に白点病に感染するのを見て「白点病のキャリア(持続感染)状態」と考えたことがあるが、原虫の生活史から考えてそれはありえず、おそらく免疫力を付けたスズメダイが低レベルの感染状態を継続していたものと現在は考えている。

そうすると、白点病治療ということは「病気になったこの魚を治す」のではなく、「白点病が蔓延したこの水槽の環境を改善する」ということだ、と思い当たる。
「環境を改善する」とはどういうことか?その対策の基本は、白点病原虫の爆発的な増殖による異常高密度な状態を、自然界に近いくらいの問題のおきない程度まで落とすこと。成虫(トロホント)からシスト、セロントにいたるライフサイクルの中のどこかで滅菌し、劇的な増大を食い止めることが重要なのだ。だからこそ早期発見し、魚がまだ死に至るほどの状態ではない間に原虫の増殖サイクルに歯止めをかけ、繰り返し感染しながら異常増殖していくことを食い止めて、あとは魚自身の免疫力と生命力に期待する、ということになると思うのだ。
白点病治療の傾向と対策(都市伝説を含む)

水産学などに基礎を置く明快な対策から、いわば都市伝説っぽいものまで数多ある白点病対策のうち、自分や自分の身の回りでおこったことを中心に改めて評価してみよう。最近では淡水性熱帯魚の世界では「とうがらし(鷹の爪)療法」といわれる民間療法(笑)が決定的対策として知られるようになっているそうな。海水魚の世界でもそれに近いくらいの決定打があればよいのだが・・・

硫酸銅を始めとする薬剤療法
硫酸銅、あるいはマラカイトグリーンなどの薬剤による療法。普通の飼育書にはセオリーとして記載されているものだが、水産学の世界ではどうやらすでに陳腐化しているらしい。シストからあふれ出て寄生する寸前のセロントを銅イオンの毒性で駆除しよう、ということだが、魚のほうが先に駆除されるケースも多々あるし、ぶっちゃけ時々刻々と消滅していく銅イオンを一定濃度で維持するのはきわめて困難だ。あらゆる薬品(毒性のある)での白点病治療に共通する「薬剤濃度維持」の問題は、結局職業的飼育者(水族館の職員かショップの店員)以外には常に大きすぎる問題なのだ。

最近よく販売され、僕も使っているICH-Xtinguisher(右図)は従来の薬剤に比べ非常に重要な部分でポイントが高い。サンゴ類や甲殻類に無害だということだ。昔から無害を触れ込みにした治療薬は多数あったが、金属イオンなどの毒性で原虫を滅菌しようとするならば、本質的に無害ではありえない。最良でも調子を落とすくらいの結果につながる。ところがこの製品は、その主成分が過酸化水素である。過酸化水素内の活性酸素で殺菌しよう、というわけで、これは非常に理にかなっている。
なぜなら高等動物は多かれ少なかれ活性酸素を無害化する酵素を持っているし、特に光合成を体内で行うサンゴ類にいたっては、光合成時に発生する活性酸素から身を守るため活性酸素無害化酵素を持っていることは間違いないからだ。もちろん無害といっても程度問題で、多すぎれば内臓をはじめさまざまな部分に深刻なダメージを受けるので注意が必要だが、僕が実際に使ってみた限りでは、アワサンゴ、エダアワサンゴ、タコアシサンゴ、ウミキノコ、コルトコーラル、ヤドカリ、レッドソックスシュリンプなどまったく問題がないどころか、酸化還元電位があがったのか、多少調子を上げたようにすら見えた。ただし、貝類などの軟体動物や光合成など行わない下等な動物には有害なようなので、注意が必要である。光合成を行うシャコガイ等の貝類ではどうなのかについては、残念ながらデータがない。
しかし、この魅力的な薬剤も、結局薬剤療法共通の課題を持っている。すなわち「飼育生物に害がなく、かつセロントを撲滅できるレベルを安定して維持する」ことが困難だ、ということである。ちなみに、説明書には規定量を一気に入れるのではなく30分間隔で3回に分けろと書いてあるが、スプレータイプを慎重に使えば一気に入れてもまったく支障はなかった。むしろ濃度維持を考えると、もたもたするよりサッサと投入したほうがいいかもしれない、と感じた。
低比重療法
どうやら現在、水産学的な対策としては主流のようである。だが、少なくとも僕は失敗した。原理はシンプルで、白点病原虫のセロント幼生が低比重下では浸透圧により破裂してしまうことを利用し、海水の比重(1.023)を大幅に引き下げ(1.008くらい)て死滅させる方法である。これならば薬剤療法よりも「安定したセロント死滅環境を維持できる」という点で、優れているといえるが、僕の意見では、「どんな魚にでも通用する」わけではない、ということだ。低比重を支持する方のWEB等の報告を見ると、だいたい魚体サイズが大きい。象とネズミの話のとおり、生物の体表面積と質量(体重)の関係は、体格が小さければ小さいほど表面積が大きい、ということになる。浸透圧ダメージは主に体表面に効いてくるから、小型の魚ほどダメージが大きいので、薬剤療法と同じく治療行為が魚を死なせる可能性は高いと言える。
それとウチのケースでは、低比重に移行し始めたとたんに症状が一斉に悪化した。もしかしたら低比重の影響で体表の粘膜が弱り、感染速度が速まったのではないかと思っている。また無脊椎動物が低比重に耐えられないので、隔離の必要があるのは薬剤療法と同じだ。低比重から通常の比重に戻したとたんに再発したとか、そもそも低比重を繰り返し行うことによるダメージが魚体に与える影響など、個人的には支持できないと思う要素が多々ある。
連続換水療法
アマチュア飼育者の支持がいちばん多い方法のように思える。魚をトリートメントタンク(またはバケツ等)に写し、そこで徹底的に毎日水換えする方法だ。魚体を離れてシストを形成している原虫を、水と一緒に捨ててしまって密度を減らしていく。十分魚体が大きく抵抗力があるならば、低比重と併用することでさらに良い成果が得られるかもしれない。ポイントは「水を換える」のではなく、できれば同じ水槽を2つ用意し、魚だけ移して空いた水槽は完全に徹底的に洗って滅菌する。もちろんベアタンク(底砂などのない水だけのタンク)でなければならない。非常に理にかなっているし、限られた時間のセロント期に対応する対策と違い、時間的にゆとりのあるシスト期を狙うので、1日1回あるいは最低でも2日に1回の水換えで効果が出せる、という点が優れている。ただ問題は、「病気になっても魚の生活は変わらない」ということだ。普段飼育している環境よりは狭かったり密度が高くなったりするので、喧嘩もするだろうし、餌を食べなくなったりするリスクがある。しかも水温の維持を意識する必要があり、小さい水槽をたくさん並べて一匹飼いというのも現実難しい。なので、少数小型なサンゴ水槽向きの魚たちを飼育するアマチュアにに向く方法なのだ。ちなみに右図は僕のトリートメント水槽(?)である。
直接ヒーターを入れるのでなく、より大きな容器に入れた水(真水でいい)にヒーターを入れて温度管理し、その中に「湯煎」のような状態で小型の隔離水槽を入れる。この容器(衣装ケース)には小型水槽が2〜3入るので、片方に魚を収容し、片方は事前に同じ水温にしておくために海水を満たして入れておく。1日に1回となりの水槽に魚だけ移し変え、空いたほうはきっちり洗浄して次に備える。こうすることで、頻繁に魚を移動させても最小限のショックで済むのだ。
そういえば昔12年間、60cm水槽でコフキイモになったゴールデンエンゼルを、やけくそで90cmのサンゴ水槽に移したところ、完治したことがある。ずーっとサンゴ水槽の力だと思っていたが、実はこの連続換水と同じ原理で白点病蔓延環境から切り離されたおかげで回復しただけだったかもしれない。
ウミトサカは白点病原虫を食う?
このへんから結構「都市伝説」っぽくなってくる。1998年ごろ、ベルリン式だ、いやそれではサンゴは飼えても魚は飼えない、など毎日BBSで仕事もしないで語りまくっていたころ、トサカがたくさん生育している水槽では白点病が出にくいという話が出た。1人だけでなく何人も同じ経験をしたという意見が集まり、そのうちある方が「トサカが白点病原虫を捕食するんじゃないかと思う」と言い出して、一同「なるほどぉー」状態になったことがある。
なかなか魅力的な推論だが、残念ながらそううまくはいかない。多少なりトサカが白点病原虫を捕食としても、それは水中を浮遊するセロント期に違いない。そもそも2時間で感染力が低下し始めるものが、狭い環境のゆえ爆発的感染を行うわけで、もしトサカの捕食により原虫密度が低下して(あるいは一定レベル以下に抑えられ)白点病が発症しないというなら、トサカは2時間で水槽内のセロントの大半を捕食できるというのだろうか?もしそれが可能なくらいトサカを入れている、というのであれば納得だが、あれほど多くの人がみなトサカフリークだったとは考えにくい。もしトサカをはじめとするソフトコーラルに原虫の殺菌(滅菌)作用があるのなら、それは捕食ではなくほかの理由であるはずだ。
そんなことを考えていて、僕は文献に驚くべき記述を見つけた。水槽飼育される或る種のソフトコーラルは、ジテルペンと呼ばれる類の物質を生産し、それは場合によって水槽内の魚すら死滅させうる、というのだ。ジテルペン類の物質は、あるものは発癌性物質であったり、あるものは逆に抗癌剤であったり、また抗菌物質であったりする。一言で言えば自然界に産する毒性物質だ。これをもってソフトコーラルは自らを天敵の食害から身を守るべく進化したという。もしある種のトサカが、魚などの高等動物には悪影響のない程度に緩やかなジテルペン系物質を産するとして、それが白点病原虫レベルの下等動物の成育を阻害する、もしくは抵抗力の低いセロント期の原虫を滅菌するとしたら?これはまた、十分に理のある説明に思えた。
食事療法による免疫強化で白点病予防?
『白点病、尾くされ病に効果的、お魚な本来持っている自然の治癒力を生かします!』というキャッチコピーを見つけた。『自然界に存在するミネラル分や薬用成分を配合し、・・・<中略>・・・薬品ではありませんので人はもちろん他の生物にも一切無害で安心してお使いいただけます。』ということらしい。うわー、うそっぽーい。霊力の壺を買いなさい、とか不老不死の効果がある○×、みたいなキャッチだと思ってブログの中で笑いものにしようとして、別の記述をWEB上で見つけて「あっ!」と叫んでしまった。というのも、水産学的な実験でラクトフェリン(母乳などに含まれる感染防御作用で知られる物質)を与えた魚群とそうでない魚群の白点病への抵抗度を調べたところ、ラクトフェリンを添加した餌を食べた魚群では感染が見られなかったのに、対照群では白点病で大半が死滅した、という内容だったのだ。要するに魚の免疫力を上昇させるような物質を配合した餌を食べている魚は白点病に感染しにくくなる、ということになる。そういえば最近人工飼料に、魚の抵抗力を増す、みたいな記述が多い。この物質は魚の免疫力を向上させるだけであって、それ自体には毒性はないから、一切無害だというのは正しい。そうすると、良かれと思って生餌中心の食餌をさせるのはむしろマイナスで、なるべくこのような優れた人工飼料を食べさせるべきだ、という話になるのだ。
というわけで、僕は現在は、極力人工飼料(僕の場合はOMEGA-ONE)を食べさせるようにしている。だいたいの魚はそれほど好きな餌ではないが、最初にこれを与えてある程度食べさせてから、好きな生餌を与えるようにすることでなんとかなると思う。
UV殺菌灯では白点病治療は不可能?
UV殺菌灯こそは、無くてもいいけどあるに越したことはない、といわれる器具の代表である。また『殺菌効果はあるが、これで病気が治るわけではない』と書かれる場合が多いので、コストの高さとあいまって、必須アイテムとはなっていないのが現状かと思う。下手すると、小型水槽でクーラーも付けない場合は水温上昇を避けるため殺菌灯は付けない、みたいな話も書かれたりする。
しかし、延々僕が持論である「白点病治療とは環境改善である」という観点で見た場合、どうだろうか?これぞまさに、環境改善ギアとして、実は白点病を怖れるアクアリストの必須アイテムなのではないか?といいたい。貴重な海の命を弄ぶのであれば、当然持っておくべきものだ、と考える。確かに大型水槽(僕の持論でいう比較的安全な環境)では飼育水の循環速度を考慮すると、普通に市販している殺菌灯で白点病原虫を滅菌する、とまではいかないだろうが、逆に小型水槽(比較的危険度の高い環境)では、きっちり水温管理できる前提で、UV殺菌灯を設置することで環境改善=白点病の治療まで可能になるかもしれない、と思うのだ。
大きな敗北、されど小さな勝利
僕はこの1年で白点病による水槽崩壊を2回、壊滅的打撃を1回経験したが、そこから得た教訓で殺菌灯をすべての水槽に設置。そして先ごろようやく、サブ水槽で感染したシマヤッコしまじろう3号を白点病から救うことに成功した。
発症した時点ですでに殺菌灯はついていたので、「なんだ予防すらできてないじゃん」といわれるかもしれないが、実際にやったことといえば、殺菌灯に加え、セロントが出やすい夜間にICH-Xtinguisherを徹底して使い、良質の人工餌を与え、水温の変化に気を配っただけだ。さらに薬効を高めることとシストを少しでも減少させるため水換えをしたくらい。今まで病気になると、悪化を怖れて水換えなど考えたこともなかったが、環境改善という考え方でいけば当然あっていいことだ。そして、ようやく小さな、されど大きな勝利を得た。苦労して餌付直後の発症だったのでガックリきたが、前向きに取り組んだ甲斐があった。
小さい水槽の苦労は単に濾過や水温維持だけではない。白点病すら小型水槽では猛威を振るうのだと思った。しかし捨てる神あれば拾う神ありで、この水槽の水はおよそ10分間で殺菌灯を3回転する。それでも毎分10Lだから、殺菌灯の能力的には余裕だ。まあこのサイズの水槽にこんな殺菌灯を付ける人は少ないとは思うが。
一方でICH-Xtinguisherを使ってピンポイントで滅菌しつつ、もう一方でUV殺菌灯でセロント期の原虫を徐々に滅菌して密度を下げて行くことができたのだろうと思う。淡水の熱帯魚で言う鷹の爪(とうがらし)療法ほど劇的効果はないが、この環境を改善するという発想は、たぶん病気に悩むアクアリストには意味のある考え方なのではないか。対症療法では完全に解決することはないと考えるしだいである。
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